知らない方に届けたいRe:ステージのご紹介

(この記事は筆者が所属するアニメ研究サークルの機関誌に投稿するために書かれたものです)

 

皆さんは2019年7月から9月にかけて放送された「Re:ステージ! ドリームデイズ♪」(以下リステDD)というアニメをご存じでしょうか?

公式サイト

https://rst-anime.com/

 

知らない方がほとんどだと思います。放送局はTOKYO MX、BSフジ、AT-Xのわずか3つ、原作小説やCDもあるにはあるのですが、なぜか全く増刷したいので店頭にも並ばず、「全てのアニメをとりあえずチェックする」タイプの人しか目につかない仕様になっているのです。

 

しかし、知名度とアニメの出来に関係はありません。むしろ出来がいいのに知名度が低いので知られていないアニメがあるなら、それはアニメーション研究会の部員として紹介しないわけにはいきません。この記事は、リステDDをそもそも知らないという方に向けて、リステDDの良さを伝える紹介記事になります。

 

ちなみに私はこの作品の素晴らしさに傾倒していまい、最終回の後には強烈な”リステロス”を発症、現在(2019/10/19)は完治こそしていないものの日常生活に復帰している状況です。この顛末は拙ブログの過去の記事をご覧ください。(ネタバレを含みます)

https://blog.hatena.ne.jp/uhowan/uhowan.hatenablog.jp/edit?entry=26006613443380444

 

 

1.Re:ステージとは?

リステDDは「Re:ステージ」(以下、リステ)と呼称されるプロジェクトのアニメ作品です。2015年にプロジェクトがスタートし、小説(ほとんど店頭に並ばない)、楽曲(ほとんど店頭に並ばない)、アプリゲーム(アクティブユーザーが少ない)があります。

 

リステDDの物語は小説の内容を再度精査してより質を高めたものになります。楽曲はかなり印象的にリステDDの中で使用されます。アプリゲームはリステDDの先の物語がメインストーリーになっています。このような事情があるので、個人的にはアニメから入っていくのをおススメしています。

 

 

2.リステDDのストーリーとテーマ

キャラクターについて簡単に紹介します。主人公チームは6人で「KiRaRe(キラリ)」という名前のグループです。メンバーは中学1年生の舞菜(まな)、紗由(さゆ)、かえ、2年生の香澄(かすみ)、3年生の瑞葉(みずは)と実(みのり)です。他にも4グループ総勢18人がリステDDには登場します。

しかし、リステDDはあくまでKiRaReに焦点の当たる物語です。彼女達は全員が昔アイドルになりたい夢を持ちながらも、それを諦めたことがあるのが特徴です。

 

そういうわけで、リステDDの話を一言でいうと、私は「アイドルになる夢を一度諦めた女子中学生が仲間達と共にもう一度夢を目指す話」と答えます。

中身はズバリ「中学生アイドル」。なので、別の言い方として「中学生が部活でアイドルをやって全国優勝を目指す話」とも言えます。

 

これを聞くと皆さん思います。

 

ラブライブじゃん!!!」

 

これは「部活アイドル」を描く場合、避けては通れない発想だと思います。部活物はそもそも全国優勝を目指すもので、競技の違いで他作品との差別化を図るのが普通です。おなじ「アイドル」競技を描くならラブライブとの比較は避けることができません。

そもそも、リステ自身、ポニーキャニオン上層部が「うちもラブライブみたいにゲームと音楽とライブとアニメで稼げるIP作れないかな~」みたいな考えで流行りに乗じて作られた作品群の一つだと私は思っています。

 

しかし、リステに関しては「部活でアイドルをやって全国優勝を目指す」というストーリーは重要ではないと私は感じています。そこで本稿ではストーリーを語らぬことによって、ラブライブとの競合を避けるという手法を取ります。この作品を語る上では「Re:(もう一度)」が生み出すテーマに目を向けることが大事で、そしてこのテーマを語ることがリステDDの良さを伝えることだと考えています。

 

そして、そのテーマが本節冒頭の「夢を一度諦めた女子中学生が仲間達と共にもう一度夢を目指す」だと私は考えています。そこには「夢」「仲間」というキーワードが見て取れます。

 

ちなみにテーマは表に出ないので考察が付きまといます。しかしなんとストーリーに触れなければテーマについていくら書いてもネタバレにならないということに気づきました。これにより紹介記事でありながら考察を書くという逆転の発想が可能となりました。お付き合いください。

 

3.過去、未来の反復。そして現在へ

リステDDは前節でも触れたように、「夢を一度諦めた女子中学生が仲間達と共にもう一度夢を目指す話」です。ここには夢をあきらめた「過去」と、目指す先の「未来」と、もう一度夢を目指す「現在」の3つの時間軸があります。

リステDDの特徴としてテーマを楽曲と組み合わせて語るのがうまいアニメです。

アニメの新曲として用意された曲に、発表順に「ミライKeyノート」(1話)「キラメキFuture」(5話)「OvertuRe:」(11話)というタイトルの曲があります。この3曲がそれぞれ「過去」「未来」「現在」に対応しています(Overtureは「序曲」の意味です)。

彼女たちは物語の中で一度過去を振り返ります。そこには諦めた夢がありました。その夢に向き合うことが未来を開く扉の鍵になります。夢を持つと未来がキラキラ輝いたものに見えてきます。その夢に向かって走り出すのが今というわけです。

個人的には時間軸にそって「過去」「現在」「未来」と並べて曲が発表されなかったことに深く感動しています。

「現在」を受け入れ、変えていくことは最も難しいことです。過去と未来は考え方を変え、認識を変えることで良くも悪くも解釈できます。ですが、現在の状況を変えるには必ず行動を伴う努力が必要です。

これは彼女達も同様でした。舞菜やかえ、香澄に特徴的でしたが、彼女達は一度仲間の力で辛かった過去を受け入れます。仲間たちと目指すべき未来もしっかりと見つめます。しかし、もう一度過去に怯えたり、後悔したりする描写が入ります。

過去と未来を反復し、現在を受け入れていく。このリアルさが楽曲にも、物語にも表れているところがリステDDのキャラクターに深みを与えていると私は思います。だからこそ、現在を走り出した彼女たちの姿に私は涙しました(最終回を見てください)。

 

4.夢にはいつでもチャレンジできる

リステDDにおける「夢」についてはもう一つ語るべきことがあります。それは「夢にはいつでもチャレンジしてもいい」ということです。

リステDDのOP「Don't think,スマイル!!」のCDジャケットにはバスが描かれています。

そして歌詞に

『未来行きのバス停 いっぱいあるけれど 同じ目的地なら 駆け出して乗り込もう きっと 何か変わるんだ』

とあります。バスは未来に向かって一気に駆け抜けるられる手段です。

「駆け出して乗り込もう」から字面どおり読むと、「さっさと夢を叶えちまおうぜ」とも取れます。しかし私は、バスがよっぽどの田舎でない限り一日に何本走っていて、バス停も複数あることがポイントなのかなと思います。前のバスに乗り遅れて、バス停に立ち止まったり、とぼとぼ徒歩で次のバス停に向かう。でも、次のバスは必ずやってくるし、どれに乗っても遅くはなってしまうけど夢にたどりつける。そんなイメージを私は持っています。

 

そして夢はかなうことは終わりではなく新しい夢へ挑戦だというのが、リステDDの「夢」観の恐ろしいところです。最終回の最後に流れ、リメンバーズ(リステオタクの通称)を涙でクシャクシャにした「367Days」という曲があります。この曲は夢がかなった瞬間を描いた歌詞になっているのですが、最後の歌詞は次のようになっています。

『いまここが キミとあの日夢見たStart Line

夢がかなったときはスタートラインなんですね。

 

このような柔軟な「夢」観を持っているからこそ、KiRaReの6人はみんな諦めた夢をもう一度夢を目指していけるんだと思います。

 

5.仲間がいれば大丈夫

 

「夢を一度諦めた女子中学生が仲間達と共にもう一度夢を目指す」とあるように、夢を目指すには「仲間」が必要です。

実はKiRaReの6人はみんな「独りぼっち」になって、夢を諦めています。(詳細はアニメを見てください)

相も変わらず歌詞を引用します。

「Don't think,スマイル!!」では、そもそもバスが「人と乗り合わせるもの」だというところが「仲間」と夢を目指す比喩になっていますし、歌詞を見ても、

『同じ空を見上げてる キミと同じ夢 目指してる ひとりで見上げた空よりも 輝く』

とあります。

「367Days」では、もっと強烈です。

『時計の針のようにバラバラだけど 同じ場所を目指し 歩んできた 針がいま 一つへと重なる』

字面だけでも、時計の針に例えられた「仲間」との歩みの重要性が分かります。時計の針が一つに重なる場所が0時か正午なので、針がちょうど上を指しているのも素晴らしい。0時ならそれは一日の始まりで夢のスタートラインの意味だし、12時でもまだまだ時間があり、夢を追いかけることができます。(気温的にはピークは14時なのでまだ先です)

 

前節と今節は「Don't think,スマイル!!」と「367Days」という同じ曲から引用をしてみました。このようにリステDDの「夢」と「仲間」は不可分のテーマになっています。もちろん他の曲も、この2つのテーマが重要視されているので、聴きこんでもらえたら嬉しいです。

 

夢を目指す上での「仲間」の必要性はもちろんリステDD内でも丁寧に描写されます。そもそもリステは「2人組」を大事にしており、舞菜と紗由、かえと香澄、瑞葉と実がカップルで、お互いの問題(過去に夢を諦めた原因)に対してお互いに救い合うことになります。仲間の存在が彼女達に元の夢を追いかけさせる原動力になっていることは丹念に描写されますので、アニメを見てください。

ちなみに今は「夢」だの「仲間」だの講釈たれていますが、私は最初はリステDDはカップルが百合百合する様子を楽しんでいました。百合が好きな人は肩肘張らず、百合を楽しむ目的でリステDDを見てもいいと思います。そして、12話で泣いてください。

 

6.さいごに

本稿では、リステDDの紹介として、そのストーリーに触れるのを避け、テーマについて説明しました。中でも「夢」「仲間」に触れることで、リステDDの素晴らしさを伝えたいと思いました。

とにかく、リステDDはテーマに対して、物語、楽曲とも真剣に向き合っています。(ゲームは割とふざけたイベントも多いのでハマったらやってみてください)。このテーマは私たちにとって、勇気をもらえるものだと思います。少しでも興味を持っていただけるのなら、ぜひアニメ「Re:ステージ! ドリームデイズ♪」を見てください。

「Re:ステージ」プロジェクトに関わる製作者、リメンバーズ全ての人に心よりの感謝をもって、本稿を締めさせていただきます。